ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

夜のミッキーマウス

かなり前の出版(2003年)ですが、最近ミッキーマウスの話をする事があって思い出し、久々に読んでみました。一時帰国の時にプレゼントで貰った本です。

表題である「夜のミッキー・マウス」、「朝のドナルド・ダック」、「詩に吠えかかるプルートー」、そして「百三歳になったアトム」とファンタジックなタイトルの詩が続いて、なんだか“カワイイ”もの狙いのあざとい本なのかな?なんて穿った見方で読み始めたのですが、「なんでもおまんこ」でやられました。
リンクされている方も多いとは思いますが、e-honのインタビューで谷川さん本人が朗読している記事を読んで、どのような抑揚で読むんだろう?と、目の前で聞く事の出来たこのインタビュアーの方が羨ましくなりました。
目に見える自然物に欲情を感じ、花に対して花ん中へ入っていきたくってしょうがねえよと同一化の欲望・エロスを詩の半ばで述べ、そして最後にすとんとタナトスへ落とす。そしてそこには自嘲という種類の笑いで締めくくる。締められた瞬間に、それまで散々並べ立てられていた自然物の爽やかさが、また青臭い卑猥感がふっと消失し、ぽつんとした寂しさが残る。不思議な読後感。


教科書に載るような詩ではないし微笑ましい可愛らしさもないですが、それでもやっぱりこの人の詩は、理解するとかしないとかそういう論理的な部分ではなくて、奥のほうにすぅっと溶け込むんだなぁと思いました。世界は書き取れない。そんな世界の一端を掴み言葉に出来る人間は、なんと美しいものを産みだすのだろう。