ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

展覧会のショウ・アップについて〜新美「Skin + Bones」vs森美「Coats!」〜

全然更新してない『にちようざっか』です、ごめんなさい。お仕事してると展覧会になかなか頻繁に行けなくなって嫌ですね。美術館の夜間開館は、週2日以上にするべきだと思う、その分午後から開館でもいいから。特に都心の美術館は是非そうして欲しい。あともうちょっと時間を延ばして欲しいですね。“20時まで”ってまだ仕事終わってないですよ、普段。その展森美は通常20時まで、金曜22時までなので嬉しい美術館。ほぼ同じ場所にあるんだから新美はもっと頑張れ(国立だからだめかなぁ?)。


さて、徐々に数をこなしていかないと手持ちのチケットが無駄になってしまうことに気づき、雨の土曜日だけど外出。出来るだけ濡れずに済むところにまずは行こうと考えて、森アーツセンターのCoats! MaxMara, 55 Years of Italian Fashion展に行ってきました。マックスマーラの服はそもそも自分では一着も持ってないし、このブランドのアイコンであるコート「101801」も肩が大きくてなんか古い型だなーっていうイメージがあったので定番とはいえ欲しいとも思ってなかったし。。。というわけでつまりマックスマーラには別に興味がないんです。でもポスターに使われているリチャード・アヴェドン*1の写真につられて行ってみることに。


ショーアップされた会場、スポットライトで見せられるコート。冒頭はファッション史としてベルリンの国立図書館から来たファッションポートレート(特にパリの流行を見せるもの)が展示されているのだけど、第2室入るといきなり現代的になる。第1室から2室への転換にはシャネルがいるのだろうけど、マックスマーラの展覧会なのでシャネルは置いといて(笑)、いきなり戦後イタリア人の仕事を見せられる。デザイナーたちの仕事部屋を見せられるような気になる第2,3室は、ブック状の展示ケースもさることながら、特に壁面の作りこみがすごい。全然見えない上のほうまでディスプレイしていて抜かりがない(もしかして抜かりあるのかもしれないけど、暗いから見えない)。そして会場が暗く鏡も多用しているのでとても広く感じる(でも見るのに夢中で鏡に気付かず衝突するわたし)。そして素っ気無く置かれるラガーフェルドのケープ(今回の展覧会で出品されているコートの中で、これが一番好き)!素敵だった〜☆


ここで思い出すのは8月に見に行った新美のSKIN + BONES 1980年代以降の建築とファッション展。これは白く広い会場に所在無げに展示される洋服たちが可哀想になる展覧会だったんだけど、やっぱり日用品(=通常その価値を重要視されないもの)を展示する際には、ショウ・アップが必要であることを痛感する。多分今回のマックスマーラのコートたちも、新美のような展示をされたら全く素敵に見えなかったことだろう。基本的に洋服というのは着ていくその場に合わせるものであり、すなわち逆を言えば、洋服を見せる場合には場をその洋服に合わせなくてはいけないのだと思う。ニュートラルな空間におかれた前衛的な洋服たちは、その前衛性を中和されてしまう。わざとらしくとてもつまらないものに見えてしまうのだ。この展覧会は本当にもったいなかった。
なおCoats!展の会場デザインは建築家 Ico Migliore イーコ・ミリオーレ氏。ミラノを拠点として活躍する建築スタジオMigliore e Servettoの建築家で、2001年に都現美で開催されたKrizia Moving Shapesの会場デザインもしているらしいけど、この展覧会は見ていません。Coats!展は日本の前にベルリンで開催されているんだけど、ベルリン会場の展示風景(建築事務所オフィシャルサイトで見られます)もかっこいい。



さて話は戻ってマックスマーラ。円形のデジタル映像フロアのあとは、時のファッションフォトグラファーたちとのコラボレーションの歴史が。カステルバジャックのコートは中世的な要素が好きでした。そしてマックスマーラのアイコン「101801」はこの部屋に展示されてるんだけど、んーやっぱりあたしは着ないなぁ。。。という感じ。メンズライク過ぎるんですね、改めて見ると。もうちょっと腰を絞ってバックベルトを付けて、と考えてたら、何だトレンチコートでいいじゃんと思ってしまった。そうそう、ウェグマンの犬が着てるコートはこの「101801」だったんですね、知らなかった。
最後はコートの各部位を触るとその製作過程が横のテレビで見られるというマルチメディア展示。バックボードに「袖にタッチ!」って書いてあるけど、ホントに触っていいの?と小心者のわたしは、監視員のお姉さんに聞いてから触るのでした。
そうそう、監視員といえば、展示台が黒くてスポット照明ということもあって、埃が目立つ展示台をマメにお掃除しているのが目に付きました。そうなの、ケースがアクリルだとまた余計に埃をすうのようね。。。と、ちょっと同情。



思っていた以上に楽しめて長居してしまったので、ムンク展はしごは不可能になってしまった。うーん、来週か。。。
ところで会場限定50着のシリアルナンバーイリコートは、もしかして売り切れたから販売していなかったのでしょうか。見てみたかったのに〜。

*1:40-60年代のHarper's BAZAARのチーフフォトグラファーであり、ハーパース引退後はファッションフォトと平行してルポルタージュ写真や被写体に迫るポートレイトを取り続けた。オフィシャルサイトはrichardavedon.com