ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ルオーとローランサン展

Rouault Cameo (Great Modern Masters Series)   Marie Laurencin
松下電工汐留ミュージアムで始まった「ルオーとローランサン パリの踊り子たち」展(2006年4月29日〜7月9日)の内覧会に行ってきた。この美術館は留学中に出来ていたようで、「一度見ておきなさいよ」と教授に招待状を貰ったので初めて行ってきたんだけど、かなり小さい。企業美術館としてもかなり小規模な方である。展示されているルオー作品は、出光美術館からの借り出しはあるものの、しかしそれ以外は全て自前。松下電工がルオーをコレクトしているとは知らなかった。
さて、展覧会なんだけど…えーと、なんすかこれ。何でルオーとローランサン??踊り子をテーマにしてるんだったら、ドガでもマティスでもスーラあたりでもいいじゃん。しかも途中からルオーのテーマはサーカスだったし。時代が近いから?いや、この時期の画家は溢れるほどいる。というわけで、どうやらバレエ・リュス*1をキーワードに両者を結び付けているようだが、しかし同じ演目で異なった舞台装置を両者が手掛けたわけではないのだ。せめて同じ演目をやっていれば、両者を同時に展示する意味が生まれるのだろうけど、結局最初から違いを提示してそのまま終わるので平行線のまま。踊り子という存在に対する両者の意識の違いなんて当たり前であり、したがってそこから生まれる作風も全く異なっている。例えば見識が全く異なっていたのにも拘らず通底するものが同じであるとか、またはその逆だとかならば企画として面白いのだが、そうではないので結局寄せ集めてこじつけただけの展示にしか見えないのだ。あとは個人的にローランサンが全く好きではないというのも、この展覧会に対する非難の原因でもあるのかもしれないが。
展示中「あ、これならイイ」と言えるローランサン作品が2点あった。1913年の《 Nils von Dardell (ニルス・フォン・ダルデル)》と1946年作《 Arlequine (女道化師)》である。あとはどうでもいい感じ。一方ルオーは今まで大量に見てきているので今更感はあるのだけど、それでもやはり宗教主題の作品はいい。版画も寂しさが詰まっていていい。確かにバレエの踊り子たちが娼婦であった19世紀という時代感は、ルオーと違ってローランサンには感じられないのかもしれないが*2、それでも広い意味での“見世物小屋”に通じる遣る瀬無さや頽廃感というものを、ローランサンは感じなかったのだろうか?展覧会に付随した講演会は踊り子に関するテーマで面白そうなので、都合がつけば行きたいな。

講演会「パリの踊り子たち」 鹿島茂共立女子大学教授)
6月17日(土) 14:00-15:30 於・松下電工ビル5階ホール
要予約 先着240名

他には銀装飾で額縁を作ろう、というワークショップを開催するそうです。柿崎博孝氏(玉川大学講師)の手引きで行われるこちらのワークショップは6月24日。先着20人で要予約、材料費は2800円だそうです。講演会とワークショップの申し込みは、往復はがきでミュージアムまで。(28-04-2006)

*1:ディアギレフが1909年に創設したバレエ団。ニジンスキーという天才ダンサーを輩出したことでも有名。演目としては1917年の《パラード》が最も著名だろう。ディアギレフ一人のカリスマで纏め上げていたこのバレエ団は、彼の死(1929年)と共に解散する事になる。

*2:ルオーは1871年、ローランサンは1883年生まれ