ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

誰も知らない

誰も知らない [DVD]
《誰も知らない》
監督:是枝裕和
日本、2003年、141分 ☆☆☆

暴力的な表現は一切無いし、映像は温かく親のような眼差しに満ちているのだけど、それでも鑑賞後に切なさや遣る瀬無さが残って仕方が無い作品。といっても、作品に対する遣る瀬無さではなくて、このような事件を引き起こす人間の存在に対して。

社会と個人の関係というテーマを撮り続けている是枝監督の最新作は「西巣鴨子供置き去り事件」を元にした作品で、母親に捨てられ数ヶ月も暮らしていかなくてはいけなかった子供の、特にその長男の生活を見つめたものでした。カンヌで主演男優賞を取ったのも頷ける、非常に強い印象を残す柳楽少年をはじめ、全てのキャストが適材適所。YOUのお母さんも良かったです。実際はとてもしっかりした人なんだろうけど、本当に子供置いて出て行っちゃう雰囲気を感じさせました。現実の事件はもっと凄惨なものだったらしいのですが、その痛々しさを感じさせつつも、映画としてファンタジックに終わらせていた点が良かったと思います。

とはいえ、鑑賞後には母親の自覚無く子供を持つとか、子供を育てることに対する現実感を感じられないような、本来“親”としての資格が無いような人間が親になりえてしまう(寧ろそういう人間こそが親になりつつある)状況を憂えざるをえません。(24-11-2004)