ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

名和晃平 - Synthesis 展、フレデリック・バック展、フレンチ・ウィンドウ展

8月26日に、夫と現代美術ツアーに行ってきました。目的地は東京都現代美術館(MOT)と森美術館(MAM)。
午前中に家を出た時は暑いくらいの日差しで「うわー日焼け止め忘れた〜」って思ってたのに、清澄白河に着いたら
ものすごい土砂降り
晴雨兼用の日傘が、通常の雨傘以上の働きを強いられ限界きてました。日傘2本持ってるんだけど、レースが付いてる方を持って出なくて良かった。。。



そんな土砂降りの中、MOTへ。2Fのカフェでランチをしてから、まずは名和晃平シンセシス / KOHEI NAWA - SYNTHESIS」展へ。入り口の係員さんが「繊細な作品が多いのでお気をつけ下さい」ってずっと言ってる。“お手荷物などぶつからないよう”お気をつけ下さいって言わないと意味が分からないよ。。。という突っ込みを心の中でしつつ、ものすごい明るい部屋へ。
入った瞬間に「あれ、キャプション無い??」と思う*1。よく見ると、作品リストみたいな大きな紙を持っている人もいる。気に入った展覧会の場合後で図録を買ってしまうので作品リスト不要派のわたしですが、展示室にキャプションが無いとなると見たい気もする。この部屋に入るまでの短い間にそんな紙置いてあったっけ?と思っていると、どうやら一巡目はとにかく見て、二巡目に入る時にこの紙を貰えるようになっているらしい。うーん、イイネ!説明を読んでから見るんじゃなくて、見てから知るために読む。正しいと思います!!

ポスターにもなっていたBEADSシリーズの鹿は、実際に見ると想像以上に美しい。ぷくぷくと沸かしたお湯から泡がでてくるようなイメージが名和氏の作品にはあったのだけど、BEADSはその泡が冷えて固まった感じ。もうこれ以上は動きませんよ!っていう静止度と同じくらい、気温が変化したら一気にこの泡は崩壊します、ていう危うい感じとが同居している。硬質な儚さっていうか、そんな矛盾した言葉が浮かびます。そしてわたしが思い描いていたぷくぷくの泡が、会場の最終コーナーにLIQUIDとして展示してあって、あー!そう!!この粘着感!この膨らみ具合!って目の前に具現化されてびっくりした。ここで出た泡が水素みたいに軽くて、シャボン玉みたいに浮いて鹿にくっつく、みたいな感覚でした。

表参道で展開していた名和氏のキティちゃんもそうだったんだけど、分裂とか融合とか、細胞レベルの話と結びつけて考えてしまうのが、名和氏のアートだと思います。無限増殖なのか、逆にどんどん消化していって消えてしまうものなのか。。。
考えさせられる+単純に見た目として美しい、という芸術に欠かせない2つの要素をちゃんと持ってる作品たちでした。といってもお固いだけではなく、VILLUSのうちの一体がミケランジェロダヴィデだったんだけど、超タラコ唇で笑っちゃっうようなものも(^∀^)




続いてフレデリック・バック展 木を植えた男 L'Homme qui plantait des Arbres」を見ます。メインとなる《木を植えた男》の上映がまずあって(スクリーンいっぱいですっごいお金かかってるー!)、あとは時系列にバックの作品が並びます。
ふわふわーっとしたアニメーションのイメージが強いバックですが、わりとポン=タヴェン派とかナヴィ派に近いような、輪郭もあって色彩もぱっと鮮やかで、と言う作品も描いていたんだなーということを知りました。油彩はセリュジェに近いかな。アヒルとかクマとか、動物を描かせたらめちゃくちゃ可愛い。。。
で、映像作品もあり、原画やセル画もありで、えーっと、
出品点数多過ぎ。
この半分くらいでいいです。。。見るの疲れちゃった。疲れたので座りたくて、最後にあった紙コップトーテムポール(自由参加)で真剣に色塗りをしてしまいました。楽しかった。





まったく降り止まない雨の中、清澄白河から次は六本木へ移動し、森美術館へ。フランスの現代アートデュシャン賞受賞作品を集めた展覧会「フレンチ・ウィンドウ展 デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」です。とりあえずチョコレート色でアフロなヴィヴァンダム君*2を見るだけでも行く価値がある、かな?と思いまして。

MAMは音声ガイドが無料なのが、いつもすごいなーと思ってしまいます。いつも借りるけど、いつも全部聞かないんだけどね。だって説明の方が観賞時間より長いことのほうが多いんだもん。じっくり見たい作品の時はかえってガイド邪魔だし。でもでもこのサービスは、ほんとに素晴らしいと思う。

展示品で予想通りよかったのは、サーダン・アフィフ Saâdane Afif の《ドクロ》(2008年 国立現代美術基金(FNAC)蔵)。天井と見比べながら「何でコレがドクロに見えるんだ!?」と考えながら見るのはとても楽しかったです。ドクロの顔も、わたし好みのいい顔でした。あとはフィリップ・ラメットの合成写真。
他に、入ってすぐのぐしゃーっと丸めた新聞紙のような金属のオブジェになんか見覚えがあって、後で図録を見たら、2004年にパリでわたしが滑り台を滑った作家ワン・ドゥ Wang Du の作品でした。びっくり!この滑り台、また滑りたい。。。



少し雨足は弱まったものの結局夜まで降り続き、ナイトウォーカーにもなれずにまっすぐ帰宅します。古典から近代までの美術は心が休まるところがいいけど、現在美術は心がざわざわしてなんだかやる気にさせてくれるところが魅力です。また面白い展覧会があるといいなー。

*1:一般的な美術展では、壁面の都合が悪くない限り、基本的にはキャプション>作品>キャプション>作品、と壁に配列します。

*2:Bruno Peinado 《無題、大きなひとつの世界》 2000年 ポワトゥ=シャラント地域現代芸術振興基金蔵