ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

フィラデルフィア美術館展

12/24に終了したフィラデルフィア美術館展に行ってきました。前から気になっていたんだけど、なかなかチケットが手に入らなかった&行く時間がなかったことにより、結局こんなぎりぎりに。。。でも最終日前日にして30分待ちというのは、わりと空いてるほうだと思う。てかこの展覧会、実はあまり巷で話題になってなかった気がする。一緒に行った人(チケット入手してくれて感謝☆)と並びながらその理由を考えてみたところ、多分京都開始だったので話題が作りにくかった*1、関連イベントが少なかった*2というところか。終了直前に30万人突破したとのことですが、いやこの数は確かにすごいけど、でも来てる作品の質を考えれば少ないと思う。


チケットなど主な広報媒体に使われていたのがこの、ルノワールの《大きな浴女》。でも個人的にルノワールは好きではないので(特にこの20世紀に入ってからのルノワールは太りすぎ。。。)、もしや爆発的な集客につながらなかったのはこの作品のせいなのでは?とか思ってみたり。このおおらかなフランス的なエロティシズムは、日本には伝わっていないと思うんだけどどうだろう?
さて、入ってすぐにまずフランス近代絵画、コロー、クールベ、マネ、ブーダンといった風景画が来る。コローを見ると、何故かプルーストが転送されるわたしです。何でなのか、自分でもほんとに分からないんだけどね。「花咲く乙女」っていう単語が似合いそうな絵だからかしらん。クールベは2点きてたけど、両方あまり好きでない時期のもの。そもそもフィラデルフィア美の持っているクールベは風景画がメインだったはずなので、そっちが見たかったなー。今パリでクールベ展が行われているのだけど(来年1/28まで、グランパレにて)、そっちに貸しちゃってたりするのかな?
一方マネ。これは知らない海景の作品《キアサージ号とアラバマ号の海戦》が良かったです!ブーダンは相変わらず19世紀の避暑地的海景をやわらかく描く。フランス滞在中にトルーヴィルには行けなかったので、夏にフランスに行く機会があれば次は是非行きたい。トルーヴィルというよりもほんとはエトルタに行きたいんだけどね(ルパンの城、てかルブラン博物館を見るために)。



次のフロアがメインというか。花形作品の集う印象派のフロア。ルノワールやモネがきらきらと飾られていましたが、なんせ混んでいるので一点ずつをゆっくり眺めることが出来ない。そこでぱっと見て惹かれたものだけをじっくり見ることに。このフロアではドガ《室内》、ルソー《陽気な道化師たち》の2点に時間をかける。
吹き抜けのところにルソーがあったのは、展示担当者はルソーが日本で人気であることを考慮してのことだろうか。うーん、獣が可愛いぞ、ルソー。フィラ美が持っているルソーでは《カーニヴァルの夕べ》が一番見たかったんだけど、これは来日しませんでしたね、残念。

  



2階に上がるとキュビとかシュルなどの20世紀絵画に。ピカソの《三人の道化師》はやっぱり楽しくていいなぁ。デュシャンの具象画《画家の父の肖像》、そして隣のフロアのドローネー《エッフェル塔》とクレー《魚の魔術》の並びも良い。ドローネーはこれ以外にも色々エッフェル塔を描いていて、彼の描くエッフェル塔はどれもすくすくと伸びる子供のようで非常に好ましい。クレーはもう、無条件で好きなので何も言うことはありません。

   


最後のフロアはアメリカ美術に充てられてたんだけど、たしかにカサットはアメリカ人だけど19世紀だし、せっかく今までの展示の流れがクロノロジックだったのに、あれ戻っちゃった、ていう感じは否めない。2点だけだったからそれほど激しく違和感はなかったけど。しかし20世紀美術は絵画の力が弱まっている時代なので、立体作品がないこのフロアはどうしても作品のパワーが少ないように感じる。ワイエスで終わりっていうのが「アメコミで締めかよ?」と思ってしまうのだ。ワイエスばっかり見せられたら、それはそれでパワーを感じるのかも知れないけれどね。それにしてもポスター等でオキーフの《ピンクの地の上の2本のカラ・リリー》が載っていたのはちょっと。。。この作品だけ目指すところが他の作品と違うので変だったと思う。展覧会の中身を紹介という点ではいいのかもしれないけど、ポスターデザインとして統一感がなくなっていた。


出品作品数72点というのは、展覧会を構成する作品数としては少なめなんだけど、でも作家のネームヴァリューや出品されている作品の質から考えれば(そして会場の混雑振りを予想すれば)、これは妥当な数字だったと思う。72点でも物足りなさを感じない展覧会でした。そう保険評価額が気になるところ。

*1:普通この手の大規模展は、東京で開始して話題を作ってから地方会場に回る

*2: Philly Soul Nightというコンサートイベントをやってはいたけど、メトロでしか広告を見なかった