ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

北斎の龍虎図

すみません、すっごい前の展覧会記録です。

原宿のラフォーレ裏という好立地条件にもかかわらずいつも人のいない太田記念美術館で、ギメ東洋美術館所蔵・浮世絵名品展が開催されていたので、会期*1終了間際の土曜日に行って来ました。通常靴を脱いで上がる美術館なので、すごく混んでいると聞いて「靴どうするんだろう?」と思っていたのですが、さすがに臨機応変、土足入場になっていました(でもさすがに畳敷きのとこは靴を脱ぐ)。10時半開館なので10時15分ごろいくと、もうすでに長蛇の列。がーん、やっぱりもっと早く来るんだった…。とはいえ開館前だったため、開いてしまえばぞろぞろと入っていくので、11時半には入館できました。


メインの龍虎図は入ってすぐの右壁にあって、たしかにこの館の展示ケースの配置からするとここが目玉品なんだけど、でも、もうちょっと出し惜しみした場所でもよかったんじゃ…。さて、太田記念が所蔵していた虎図と、ギメが持っていた龍図、この二幅が双幅であると判明した経緯は偶然らしい。2005年夏、日本におけるギメ館蔵所蔵品展の作品選定を行っていた時に、永田生慈氏(太田記念の副館長)が、ギメ館長の出してきた龍図の表装が自館所蔵の虎図表装と同じであることに気がついたことだという*2。展覧会場で見たときはあえて合わせたのかと思っていたんだけど、そうではなくて最初から同表装だったらしい。龍虎の視線が絡み合っている…といえばそうかもしれないが、すみません、正直あんまりそうは見えませんでした。虎は龍を見ているけど、龍はもっと中空を見ている感じがするよ。色のある虎図よりも、墨一色の龍図のほうが好き。



この絵はチケットになっていた北斎の絵なんだけど、残念ながら東京展は前期のみの出品だったらしく、あたしは見られませんでした。他に前期のみ出展で見られなくて残念な思いをしたのは「百物語」シリーズ。悔しい〜!笑い般若すごく見たかった…。でも北斎の、他の植物図は面白かった。特に朝顔に蛙図は、蛙何処にいんの〜?って探す楽しみが。百合図はすごくモダンな構成だったなぁ。


  
左はいわずと知れた広重の月雁図。馬鹿(うましか)の落款は切手になった時に隠れてしまったけれども、やっぱりこの落款あってこそ可愛いと思う。
右は、白粉の粉が匂い立つ様な女を描くことにかけては天才的な歌麿の絵の中でも、珍しく若い女を描いていて可愛かった一枚。花町の女になってまだ日の浅い、下層遊女の川岸の若々しさとふてぶてしさが見える。女はここから成り上がるのだ。
歌麿や鳥居清長は健康的な女を描くからふてぶてしさが表現されるのだけど、一方でわたしの好きな鈴木春信の描く女はどうしたって幸せになれなさそうで、そこがまたきゅんとくる。歌麿派と春信派は、西洋美術にたとえるならルーベンス派かクラナッハ派かだと思う。あたしはクラナッハ派です。ちなみに今回歌麿の絵兄弟「女三の宮」が出ていましたが、柏木の切ない恋心を感じさせるには、春信の絵のほうが適していると思う。春信に女三の宮を描いた作品はあるのだろうか?気になる。


他にも力士絵とか北斎の風景画とか、たくさんの良品が出揃っているので、東京で見逃した方は是非大阪へどうぞ。(24-02-2007)

*1:東京展は2007年1月3日〜2月25日、大阪展は4月10日〜5月27日

*2:他にもこの二幅が双幅であるという検証事項はあるのだが、それは展覧会図録に掲載された論文に載っているので、そちらをお読みください。