ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

日韓現代漆芸展

現在「NHK日曜美術館30年展」を開催している藝大美術館で、同時開催中の無料展示「Japan&Korea 漆 arts exhibition 日本・韓国 現代漆芸作家による漆芸の現在」展を見に行く。

陶磁器を英語でchinaと言いうのに対し、漆器のことはjapanと言う*1。では間の韓国ではどのような漆器が生み出されているのだろう?とは昔からちょっと疑問だったのだが、今回は現代作家ものの展覧会。無料展示なのに結構作品数があって、見ごたえは十分。


どこがどうとは言えないのだけど、なんとなくぱっと見て「あ、これ日本人のだ」「こっちは韓国人のだ」と分かる。これってなんなんだろう?よく似てるんだけど、作風が国民性を表している。強いて言えば日本人の作品の方がミニマム、韓国人の作品はダイナミックなものが多い。技巧としてはどちらも細かいんだけど、全体としてみた時にきゅっと纏まって見えるのが日本人作家のものなのだ。どちらの国の作家にも「うぁこれいい!」と思うものがあった。
メモを取りながら見ていなかったので名前を覚えていないのだけど、タイトルが《秋に》という、湯飲みと菓子皿のセットを作った韓国人作家のもの、これはすーごく柔らかで愛らしい素敵な作品だった。一番好き。漆は黒でしょ、と思っているわたしですら、この作品の朱のグラデーションの綿密さと艶にやられた。
他には日本人作家のもので(荒木さんていう作家だったと思うんだけど…自信ない)、色漆で薄紫色の花を散りばめた箱があって、それも素敵だった。漆って言われなければ青磁かと思うような、本当にふわ〜っとした色なの。松島さくら子さんの《胸飾り》(っていうタイトルだったか…?)は、宇治平等院の菩薩さまの雲のように軽やか*2。他には作家の名前もタイトルも思い出せないんだけど、鬼灯の絵が描かれた手箱があって、その鬼灯の描写の繊細さはすごかった。個人的にはサイドのギザギザ模様が金砂子だったらもっと良かったのにと思ったけど。
逆に「これ、漆じゃなくてもいいんじゃない?」と思う作品も数々。現代彫刻の後追いでしか無いような作品は、どんなに漆工芸の技法として繊細ですごくても、「どっかで見たな」で終わってしまう。コンセプトとフォルムにしか目をいかせないのだ。あとは、漆芸の魅力はなんと言っても漆の黒い艶だと思うのだけど、その深みのある黒という地の余白を活かさずにモチーフで埋めてしまっている作品は、もったいないなぁと思わせる。螺鈿で敷き詰めるにしてももう一息!ていう感じの作品がちらほら。でも全体的に面白い作品の多い展覧会だった。


この展覧会は、10月15日まで。その後11月3日(金)〜11月27日(月)、石川県輪島漆芸美術館に巡回します。


漆芸の歴史や技術に関しては、石川県インパク運営事務局のサイト百工比照が分かり易いです。(09-10-2006)

*1:蒔絵や螺鈿の細工が施された漆芸は華やかで諸外国に人気だったため、注文を受け多く輸出されたことからこう呼ばれる。ただし日本が発祥の地というわけではなく、現在における世界最古の漆は約7000年前の浙江省の河姆渡遺跡でみつかったもの。漆の木は、多く東アジア〜東南アジアに繁茂する。

*2:でも中心はぽっかりと開いているので、「雲中供養菩薩外出中」って札をかけたくなった