ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

会田誠展@森美

森美 会田誠展
会田さんといえば今や大人気の作家さんですが、でもいざ展覧会をとなると、彼の作品の中でも特にエログロ系な作品は公立館ではまず展示できないだろうから難しいのかな〜と思っていました。そんな中、私立館のトップともいえる森美術館での開催!会場の広さや客層からいってもベストな会場だと思います。
作家のTwitterで開催準備しているのを知って以来かなり楽しみにしていました。午前中だけ休日出勤だった夫と六本木で待ち合わせしていざ会田誠展 天才でごめんなさい AIDA MAKOTO : Monument for nothing」へ☆

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会田誠は、今日最も注目されている日本の現代アーティストのひとりです。その作品は、グロテスクでエロティックな作風を見せたと思えば、一方では政治的、歴史的な課題への鋭い批評性を見せます。また日本の現代社会を投影しながら、同時に伝統的な美術作品や様式も多く参照されています。ただ、その作品を俯瞰してみると、この多義性こそが日本社会の縮図のように見えてくることも事実です。会田誠の美術館での初個展となる本展では、デビュー以来20年以上にわたる会田の混沌の全貌を、新作を含む約100点を通して明らかにします。


会期:2012年11月17日(土)−2013年3月31日(日)
会場:森美術館六本木ヒルズ森タワー53階)


出品作品リストはこちら→PDF


入ってすぐは初期作品。雑な感じと、でも笑っちゃうネタが大画面で繰り広げられて若さを感じます。47歳という年齢からしても、漫画とタブローの中間にいるのを自覚しながら書いてるのかなと。30代もそうだけどたぶん40代の作家さんにとっては、おそらく学生時代はファインアートよりもサブカルチャーのほうが勢いがあって魅力的だったと思うから。今の20代はどうだろう?わりと現代美術シーンが盛り上がってきて、再びファインアートに魅力を感じている人が増えてきているのだろうか?とはいえ最近のファインアートは、かつてのファインアートとは違う流れになってきてはいるのですが。。。


戦争画Returnsのシリーズは、いくつかはギャラリーなどで見ていましたが、まとめてこれだけ見たのは初めて。日本画っぽいものをあえて作るところに、藝大の油卒(=日本画卒じゃない)ならではのひねくれ具合もあるのかもと思ってしまう。日本画卒だったらできないよなーという。


《ジューサーミキサー》 2001年 高橋コレクション カンヴァスにアクリル絵具 Courtesy:Mizuma Art Gallery


わたしが現物を見たかった作品ベスト1な《ジューサーミキサー》。こんな大きい(2900x2105mm)作品だったのか!とまずびっくり。
この作品の前後に展示されている、殴り書きみたいなのとか小学生のポスターコンクール風なのとは一線を画す精緻な筆致で描かれたリアルな作品で、見れば見るほど吸い込まれる。この中の人が全部フィギュアだったらいいのにという希望は、ストロベリージュースのような赤色によって拒否される。同じ部屋に電柱に留まる鴉を描いた日本画風の作品《電信柱、カラス、その他》(2012年)があったんだけど、鳥たちが咥えている物によって、平穏な世界が下界では起きていないことを想像させるのと同じ。隣に置かれた人間が山積みになっている《灰色の山》(2009−11年 タグチ・アートコレクション 制作協力:渡辺篤 Courtesy:Mizuma Art Gallery)と合わせて殺伐たる現実世界を見せつけられるような気分になる。
その一方、反対の壁には広報で使われている《滝の絵》(2007−10年 国立国際美術館 Courtesy:Mizuma Art Gallery)や新作《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》(2012年- 継続中)のようにカラフルで桃源郷的な作品や、こんなに撃たれちゃっても大丈夫!だってリアルじゃないんだもん!とでも言っているような作品もあって、少し救われる。この大画面作品の部屋は極から極へと振り回されるような感覚になる部屋でした。



←館内で写真OKだったオブジェ《考えない人》(2012年)。金色のうんちをぷりぷりしながら座り込んでいます。隣に新宿御苑をどうすればいいか、という黒板に描かれたヴォイスのような作品があるのですが、考えてない振りをして彼は御苑について考えていたり。。。しないかな?



→笑い展で見て面白かった《日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ》(2005年)が再び!前回は狭い小部屋に入って見るものでしたが、今回は新宿城なる段ボールに囲まれて。やっぱり面白い。ほろ酔いなのがいいんですよねー。

ちなみにこの作品の背後にある《日本語》(2008年)は料紙装飾が施された伝統的な絵巻物。。。的な作品ですが、描いてあることは中2の殴り書きまたは下世話なネタばかりです。それっぽく見えちゃう!個人的には「俺は冬子さんに舐められたい」というのがツボでした。冬子さんて、やっぱりあの冬子さんですよね。


18禁部屋も、ちょうど良いサイズかつ代表作が一同に揃えられていてとても良かった。食用人造少女は、ほんと気持ち悪い。でも発想の天才っぷりに感心する。ほんと、「天才でごめんなさい」という展覧会タイトル通りの展覧会でした。


観賞時点で展覧会図録はまだ出来ていませんでした。12月中旬以降の発売だそうです。インスタレーションビューを入れる予定なのかな?楽しみです。
ちなみにグレちゃんは、18禁部屋のあたりではエルゴですやすや寝てました。ジャンブル〜のあたりでは起きていたのですが、果して記憶に残るのかしら?