ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

メゾン・ド・ヒミコ

メゾン・ド・ヒミコ 通常版 [DVD]
タイトル:メゾン・ド・ヒミコ
監督:犬童一心
脚本:渡辺あや
音楽:細野晴臣
2005年、日本、131分

執筆の頭休めに、先日テレビでやっていたのを録画しておいたこの映画を見ることに。予告を見て気になっていたんだけど、当時留学してて公開時は日本にいなかったので見られなかったのです。ようやく。

もう5年も前の映画なのかと思うくらい、今もみずみずしい。最近の犬童一心の映画は2009年の《ゼロの焦点》を見たんだけど、やっぱり惹き付ける映画を撮る人だなあと思いました。《ゼロの焦点》は原作が素晴らしく面白いから当然なんだけど、それでもやっぱりカメラワークとか。


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Histoire
銀座の「卑弥呼」というゲイバーのママだった“卑弥呼”が癌に冒され、神奈川県大浦海岸にゲイのための老人ホームを作ったことから物語は始まる。彼は以前女性と結婚していて、その娘沙織は、父に捨てられ母も病で亡くし、借金を抱える生活多くっていた。そこにある日、ある青年が現れる。「癌で余命わずかな父を見るためにもホームでアルバイトをしないか」という誘いとともに。その青年は、父・卑弥呼の恋人だった。

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老人ホームとはいえ、メゾン・ド・ヒミコで自由に動けないのは主の卑弥呼田中泯)だけ。あとの老人たちは好きな裁縫をしたり、ダンスをしたり、将棋をやったり、大学のゲイサークルの子たちと海に入ったりする。老人ホームだけど死に近くはなさそうなメンバーたちを少し変えたのは、ルビィ(歌澤寅右衛門)が倒れたこと。ゲイであることを知らない息子に引き取らせるか相談し合う場面は、ゲイでありかつ親である側と、ヘテロでありかつ子である側の両方の主張がそれぞれにわかるだけに、堂々巡りな問題なんだと思った。この作品のなかではゲイと知らないってことが焦点だったけど、この問題は「不治の病」だったり「伝染病」だったり色々ゲイでもヘテロでもいつでも起こりうる問題に変換してみることも出来るし、自分はどうするんだろう?と惹き付けてつい考えてしまう。

皆でダンスホールに行った時の、「トイレで化粧直しをするのが夢だったのよね」と話す山崎(青山吉良)の台詞は、こんなしんみりした口調じゃないけどわたしもゲイ友から言われたことがあって、女子にしてみたら何気ないことでも憧れられるシチュエーションなんだなと思ったことだったので、このリンクにはびっくりした。

春彦(オダギリジョー)が欲望をぶつける相手を沙織(柴咲コウ)にしたときは「えー無しでしょ!!」と思ったけど、やっぱりな展開になって、女子としては切ないけど鑑賞者としては嬉しかった。細川専務(西島秀俊)はとにかくチャラくてダメ男なので、沙織には早くもっといい相手が現れたらいいのにと思う。でもメゾンの居心地が良過ぎて、しばらくは難しいのかもしれない。



舞踊家・田中泯がちらっとも踊らず、立って歩くシーンも殆ど無く、ただひたすら横たわりながらの、それでもこの存在感!!拘束された身体の中で発せられる気合いは、さすがです。美しかった。



見終わってから、身近な人を今よりもっと大切にしよう、いっぱい伝えよう、と改めて思うような、ほっとする映画です。
あとオダギリジョーがハンサムすぎるので、旦那さんや恋人とは一緒に見ない方がいいです。一人でじっと観賞がおすすめ。