ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ユビュ、ユトリロ、サスナル

ロンドンに留学していた大学時代の同級生Dと久々の再会。パリに遊びに来てくれた時にあって以来だから5〜6年ぶり!でも全然変わってなかった。学部のときの話とか、お互いの留学の話、そして今お互いにやっている仕事の話など話は尽きない。



待ち合わせは汐留。「ルオー財団秘蔵 ユビュ 知られざるルオーの素顔」*1を見る。よくわかってなかったんだけど、『ユビュ王』展じゃなくて、ヴォラールが買い取ってルオーに描かせた“ユビュおやじ”の展覧会でした。あのぐるぐるお腹がたくさん見られる〜♡と勝手に思っていたので、ある意味期待と違ってた。
とはいえ、敬虔なカトリック信者というイメージばかりがクローズアップされているルオーにしては大胆で過激な作品が多く、その点で確かに“知られざる”なのかも。師匠ギュスターヴ・モローにも通じる古典的・伝統的な構図(例えば片腕を挙げて横たわる人物増)の作品もある一方で、ジョセフィン・ベイカーばりの豊満な肉体を誇示するような近代的な作品も。
会場は制作順序に従い「プロジェ」→「エチュード」→「ヴァリアント」と展示されており、凝り性ルオーが一つの作品を繰り返し様々な形で残していることがよくわかる。オリジナルである「ユビュ王」についてあまりよく知らないという人は、会場入り口手前で約4分のアニメを流しているので、それを見てから入るといいと思います。
作品も可愛いんだけど、ヴォラールとの書簡とか、資料類の至る所に描かれた落書きだったりイラストだったりが本当に愛らしい。こんな手紙貰いたい。



お昼ご飯を銀座で食べてから新宿に移動。続いて「モーリス・ユトリロ パリを愛した孤独な画家」*2を見る。
ユトリロ画業を追う展覧会と歌っているが、正直言って不満。白の時代が一番ユトリロの作品としては意欲的でいいものがあるけれど、その白に時代からはほんの数点、しかもあんあんまり白くない。モンマニーの時代は「あぁそうだね」って感じの作品でしたがそれもごくわずか。展示されている大半は色彩の時代と呼ばれはしているものの、つまるところ閉じ込められてお酒を餌にひたすら絵はがき見ながら描かされていたつまらない時代のものばかり。会場内のパネルでは“貨幣製造機”との評が出ていましたが、まさにそんな投げやりな仕事。もともとユトリロの絵は好きではないので、日本初公開品ばかりというこの展覧会で何かいい発見があればと思いましたが、案の定と言うかさらに嫌いになってしまいました。。。残念。制作への情熱などいっさいかいま見られないユトリロの絵が当時からそして未だに人気だといわれる理由が分からない。来る度に地味に展示替えをしている所蔵作品コーナーの東郷青児作品に、見たことのないタイプのものを2点見つけた点のみユトリロ展に来た収穫か。


後味の悪い展覧会(開催間が悪いわけではなく、ユトリロが悪いんだけど)で今日一日を終わりたくなーい!、でももう18時で美術館はだいたいどこも閉まってしまっている。さてどうしよう?となったところ、Dが「サスナル見に行く?」と提案。場所が青山だというので、わたしの行きたい洋服屋もあるし是非行きましょう、ということで新宿から原宿へ移動。
久しぶりに足を運んだ原宿から表参道までは徒歩。駅前にGAPができたのは知ってたけど、交差点のGAPがすっかり更地になっていたのは知らなかったので、結構衝撃。そんなに古い建物でもなかったのに、果たしてここには何が建つんだろう?

青山でまずわたしがショッピング(D君お待たせしました)。Tシャツとパンツをお買い上げ。ここ最近カーゴスタイルのハーフパンツ、でも素材はシルクみたいなテロンとしたもの、というのを探していたんだけどなかなか無い。ほんと裁縫さえ美味ければ自分で作りたい。買ったパンツはシルク素材ではなかったけど、丈とかサイズ(34がまだあった♡)がちょうど良く、また持っていないタイプのものだったのでついうっかり買ってしまった。Tシャツは毎年買っている犬のシリーズ。今年のプリントはなんかアニメのデッサンみたいなんだけど、よく見ると可愛いく見えてきたのと、襟ぐりのカッティングが柔らかいのにどことなくシャープだったので購入。


買い物のあとRAT HOLE GALLERYへ行ってWilhelm Sasnal(1972−)の展示*3を見る。ポーランド出身のサスナル、2000年頃から広く知られるようになった作家です。ビデオ作品しか知らなかったのですが、タブローも良かったです。Railwayという黒い、なんだかコールタールで描いたような殺伐として風景画が良かったなぁ。
映像(DVDではなく今時16mmで、機械が回る音もまたイイ)作品の中では歌の歌詞をペンで消して行きながら歌うやつが良かったです。時々ちょっと遅れちゃうの。労働者のシャワーシーンの映像もシビアで、でも時々ユーモラスで面白かったです。


ギャラリーを後にして、A to Z Cafeにてお茶。D君はワインを頼んでて、あれビールじゃないの?って話から通風の話に。。。ロンドンで一生分のビールを飲んだんだと思って諦めなさい(笑)。

*1:パナソニック電工汐留ミュージアム:2010年4月10日(土)〜6月13日(日) 月曜休館

*2:損保ジャパン東郷青児美術館:2010年4月17日(土)〜7月4日(日) 月曜休館

*3:@RAT HOLE GALLERY:2010年4月2日(金)〜6月6日(日) 月曜休廊