ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

夏から秋にかけての展覧会備忘録

展覧会については、ゾーヴァの可愛さについてしか書いてなかったですね。
結構前に見た展覧会も多いので、備忘録的な感想を少しずつ。


8月
「美をめぐる100年のドラマ フランス絵画の19世紀」展
横浜美術館(2009年6月12日〜8月31日)

よくここまで集めたなー!というのがもう正直なところ。かかってる金額がすごそう。輸送費だけでも相当な額じゃないのかと思う。ありがたい展覧会です。美少年を描かせたら右に出るものはいないのでは、というジロデ=トリオゾンの作品も来てて、「あらじゃぁ今あの壁には何がかかっているのかしら?」と借用先美術館の抜けた壁も心配になるほどの名作もありーの、倉庫から引っ張り出したんだろうなって作品もありーので、19世紀フランス絵画を堪能できる展覧会でした。趣味の問題だけど、やっぱり1880年代くらいまでの作品はいいなぁ。


9月
ゴーギャン展」
東京国立近代美術館(2009年7月3日〜9月23日)

これはわりと国内からの作品もあったりしてこまめに節約してる感もありましたが、でもやっぱり《我々はどこから来たのか、我々は何物か、我々はどこへ行くのか》を持ってきたっていうのはすごいです。しかしCMをやらないNHK教育が絡んでいるせいか、近美にしては人が少なかったような。それとも皆実はゴーギャンそんなに好きじゃないとか?研究するにはいい作家だとは思いますが、絵が好きかって聞かれると微妙なんだよね。。。

ベルギー王立美術館コレクション ベルギー近代絵画のあゆみ」展
損保ジャパン東郷青児美術館(2009年9月12日〜11月29日)

ベルギー王立美術館は、わたしの留学中19世紀の部屋が改装で閉まっていたので行かなかったんだよなーと思いつつ、会期最初のころ行きました。アンソールはいいですよね。髑髏じゃなく花を描かせてもやっぱりいい。ボナールは見ると温かい気持ちになる。


10月
クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 ウィーンの黄金時代を彩った画家たち。」
日本橋高島屋8階ホール(2009年9月16日〜10月12日)

北海道物産展が隣でやっていたのですが、ファシリティレポートこれで通ったの!?と疑わしい会場でした。せっかくいい作品も来てるのに、床も揺れるし、高島屋は美術品を飾りたいなら設備投資をするべきだと思います。美術館ちゃんと作ればいいのに。ウィーン世紀末展といえばパリで見た世紀末4人展(クリムト、シーレ、ココシュカ、モーザー)がとても良かったので、ついそれと比較してしまう。特にココシュカをもっと日本で紹介できないもんかなぁ?と思いながら見てました。あとやっぱり何だかんだ言っても、やっぱりシーレはすごい。迫力というか、気概がちがう。

「皇室の名宝 ―日本美の華 1期)永徳、若冲から大観、松園まで」
東京国立博物館(2009年10月6日〜11月3日 2期は11月12日〜11月29日)

これはもう、若冲のためだけにあるような展覧会でした。若冲だけでもう満足です、と言わせるような。多分会場構成を決めた人は、若冲ルームに1人でいる幸せのためだけにこの配置を決めたんじゃないだろうか。第3室と4室はオマケでしたね、完全に。

「フランスの浮世絵師 アンリ・リヴィエール展」
神奈川県立近代美術館 葉山(2009年9月5日〜10月12日)

リヴィエールについては作品を数点しか知らないので、勉強と思って見に行く。葉山の近美は初めて行ったのだけどえらく遠いのね。逗子からバスで20分(帰りは交通渋滞のせいで50分!)。でも海の真横でピクニック気分でした。実際お弁当作って旦那さんと行ったのですが、展覧会見る前に海辺でお弁当食べただけでもう結構満足でした。さて展覧会。パリ風景とか何点かは面白いんだけど、ブルターニュの風景版画とかは結局絵本の挿絵か浮世絵の亜流でしかないような。。。可愛いしほのぼのしてるしで悪くは無いんだけど、基本的にそんなに面白い作家では無いと思いました。日本の作家のコーナーは蛇足でしたね。ただでさえ作品点数多いし。リヴィエールだけに絞った方が良かったと思う。

「迷宮への招待 エッシャー展」
@そごう美術館(2009年10月10日〜11月16日)

全てハウステンボス美術館からの借用ということで、よく見る作品ばかり。でも後期の騙し絵作品より初期作品の展示に力がこもっている。初期の動物のとか、風景版画とかはすごく好きなのでいい。後期の、たとえば《滝》や《ベルベデーレ(物見の塔)》の背景にはイタリアの風景が描かれていて、やはりオランダに戻ったあとでも若い頃過ごしたイタリアへの郷愁がエッシャーの中でずっと続いていた事がよく分かるし、また晩年の彼の制作を支えるべき土台がイタリア滞在時代に培われたことも分かった。《バベルの塔》の刷ったものが見たかったな。版木がすごいだけになおさら。

アイ・ウェイウェイ展 ―何に因って? 現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦」
森美術館(2009年7月25日〜11月8日)

変な副題だなぁと思ってたんだけど、チケットみてaccording to What ? の略なのかと納得。ちょうど中国につい最近まで住んでいた友人が帰国して、会う約束をしていたので彼女と見に行く。中国に行った事の無いわたしには「実に中国的なモチーフ」と説明されてもよく分からないのだけど、その分からなさを一緒に行った彼女に聞きながら鑑賞したので大変楽しかった。写真の中に出てくる中国語の落書きを読んでもらったりもしました。プーアル茶でつくった入れない家は、すっごくいい香り〜。一緒に行った友人は「やだ〜プーアル茶ってすごく高いのよ」と言っていて、それもまた「へぇ」という感じ。烏龍茶も物によってはすごく高いけど、わたしの日常生活の烏龍茶は所詮ペットボトルのものだし、プーアル茶だっておなじようにジャスミン茶とブレンドされてるもの、くらいの認識なのだ。それが「すごく高いもの」であり、その高いものをつかって家やらキューブを造るということはどういう意味があるんだろうかと、改めて考える。木の中心を中国の形に刳り貫いた作品は、コンセプト的にも面白いが、その細工まで美しく本当にアートだった。月の箪笥も良かったなぁ。