ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ロートレック展

東京では、六本木のサントリーミュージアムで2008年1月26日〜3月9日まで行われていたこの展覧会「ロートレック展 パリ、美しき時代に生きて Toulouse-Lautrec et la vie parisienne」。終了の数日前に見に行ったらカタログが売り切れ!「明日の夕方に再入荷です」と聞いたので、(宅配サービスもあると言うことだったのだけど、まぁ会社からすぐだし)明日また来るからいいですと伝え、翌日買いに行きました。表紙がなんかちょっとエルメス風。トゥールーズロートレックはサインがかっこいいからいろんなことが出来ていいなぁ。



さて一般的に「ロートレック」と言われていますが、正しい苗字は「トゥールーズロートレック」。本名はフルネームで Henri de Toulouse-Lautrec アンリ・ド・トゥールーズロートレック。実に貴族的な、優雅な名前です(たしか伯爵の称号だったはず)。その優雅さゆえに、幼いころに作家の写真を見て「え、この人?」と思ったうちの一人です。
そんなトゥールーズロートレックの、パリ時代の作品(といっても彼の傑作が生まれるのはパリ時代なので、つまりは最盛期のトゥールーズロートレック作品)を集めた展覧会でした。資料写真も多く(提供元が鹿島先生なので、著書でよく拝見していた写真が多かったですが)、19世紀のパリに想いを馳せることのできる、非常に充実した展覧会でした。また今回初めて音声ガイドを借りてみたのですが、当時の音源のシャンソンも含まれていて大変楽しめました。


展覧会は、パリのオルセー美術館から油彩7点、素描16点の他、ロートレックの地元アルビにあるトゥールーズロートレック美術館などからも借用し、それに加えてサントリー天保山の持っているリトを最大限に魅せるべく、浮世絵を初めとする日本国内からの出品もあり、映像含め総数296点の出品作品で構成。
誰もが知っているであろうディヴァン・ジャポネやアリスティド・ブリュアンのリトなど、「あ、コレコレ」と鑑賞者を安心させる要点はしっかり抑えつつ、ルビュ・ブランシュやミルリトンといった19世紀研究家には馴染み深い雑誌もしっかり展示(中が見たい〜)。様々な客層を満足させる、綿密な作りだったと思います。見終わったときに「ん〜さすがだ!」と唸ってしまいました。


それにしてもロートレックの魅力はその人物描写、その表情の切り取り方+ポージング。歌舞伎画の大首絵っぽくもありつつ、しかし大首ではなくほぼ全身像で被写体を表現する。顔のアップも描いてはいるけれど、彼の興味は何と言っても身体の柔軟さにあったように思います。それは自分が人並みの身体を所有できなかったことと、なにか関係があるのかもしれません。あるいはまた、束縛のコルセットから解放されつつある時代背景も関係あるのかもしれません。


    


今回の展覧会は、ロートレックのパリ時代を振り返るものだったんだけど、いくつかの作品が「あ、ムンクっぽい」とか「ドニっぽい」とか、パリで見た制作座の展覧会を彷彿とさせるものがあって、あらためて混沌の19世紀末の面白さ、猥雑さ、共通性、そんなものを研究したいなと思わせてくれました。

グッズもたくさんあって面白かったです。JALとのコラボ商品とか手拭とか(でもジャヌ・アヴリルの手拭はちょっと惜しい出来だったなー)。とりあえずブリュアンのクリアファイル愛用中。