ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

鳥獣戯画がやってきた!展

はいはい、この秋最も楽しみにしていた展覧会のひとつ、鳥獣戯画がやってきた!国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌展を見てきました。あー楽しかった。癒されました。
世間的には連休なのに出勤しなくちゃいけなくて、だったらついでにサントリー美に行くぞ!と思っていたら、金曜日は終電まで仕事だったので(涙)、土曜日は絶対行く!と決めてさくさく仕事。1時間しか見る時間無かったけど、じっくりゆっくり見てきました。巻きなおしの都合上、一回目の見学はどうしても26日までに行かなくちゃいけなかったので、間に合って良かった!

さて、甲巻(鳥獣人物戯画絵巻は甲乙丙丁の4巻からなる絵巻です)の兎と蛙の場面があまりにも有名なこの鳥獣人物戯画絵巻ですが、今回は4巻全てが展示、かつその他の御伽草子絵巻も一緒に公開ということもあって、数年前に以前のサントリー美術館で見た鼠草紙絵巻が出るかも??という予想の元行ってみたら。。。やっぱり☆ありました!くぅ〜可愛い〜下手可愛い〜!!

今回の展覧会は、「鳥獣戯画のすべて」「鳥獣戯画系譜」と大きく分けて2章構成。まずは鳥獣人物戯画をじっくり、甲乙丙丁の順に見せ。それから摸本(長尾摸本、探幽縮図、住吉摸本など)や断簡などが丁寧に展示。特に長尾摸本は最後にじぃっと蛇がいるのがとても印象的。この蛇の存在について、展覧会では丙巻に逃げ去る蛇が描かれていることを説明していて、謎解き物を読んでいるような感覚で展覧会を見進める。まだ諸説入り乱れる絵巻だからこその楽しみ。


甲巻で特に好きな場面↓
    



探幽縮図*1は上手過ぎてムカつきます。甲巻もめちゃくちゃ上手いんだけど、探幽のはところどころ垂らし込みを使って猿の毛皮の柔らかさを出したりしててにくい演出。しかもたいして悩まずにさらさら〜って描いてる風なところがまた悔しい。
明治の文人画家、田崎草雲のコピーもまた新鮮な面白さ。独自のファンタジーを入れつつ、ほんわかとややかすれた筆に淡い色彩で彩られた鳥獣戯画に、つい顔がほころんでしまう。


グッズ(便利堂さんがんばってます)コーナーを途中にはさみ、下階のフロアではまず白描画を追います。というのもこの鳥獣人物戯画の作者は、密教系絵仏師であったという説と宮廷絵師であったという説が2大有力説だから。密教系絵仏師説を押す理由はその図像の酷似(十二神将の虎)であり、また一方の宮廷絵師説を押すのは年中行事絵巻に描かれる加茂祭の傘鉾造り物ということで、その両者が並んで展示されている。個人的には絵仏師説派なんだけど、今回展覧会を見た人たちはどちら派が多いのかなあ?
次にユーモアのあり方ということで、勝絵絵巻や放屁合戦絵巻など、昔の日本人のおおらかさ溢れる絵巻が展開。解説でも「呆れるほどふざけた主題」「やりたい放題」と、大笑いしながら研究してる楽しそうな姿が浮かぶ文面です。この肛門期の幼児的なあっけらかんとした性の解放性を、日本人はいつ失ってしまったんだろうなぁと思いながら眺めていると、なんか観覧者の皆さん、他の絵巻よりも過ぎ去るのが速い気がする。。。見ちゃいけないものを見てる気分なんだろうか。因みに春画もわたしにとってはエロというより笑いに近いんだけど、それとも当時は十分エロだったんだろうか?
てかこのぶっ掛けてる人、おならなんだろうけど違うもののようにも見える。そしてそれよりも後ろにいるアクロバティックな人のほうについ目が入ってしまう。でんぐり返しに失敗したのか、なんか見せつけようとしてるのか。。。皆揃って「くっせー」とか言いながら合戦してるのかと思うと、ほんと阿呆らしくて面白い。

西行物語絵巻は、俗世への未練を断ち切るべくわが子を蹴り飛ばす場面が面白くて好きなのですが、今回展示されていた白描の作例の子供はいい味出してます。今までで一番ヒットかも。「あっ。。。」っていう感じなの。モーションストップかけてる感じ。

そして楽しみにしていたのは鼠草子絵巻。鼠の出家の際は何処まで剃れば“剃髪”かという議論を学生時代にゼミでやったのを思い出します。ていうか姫君も鼠に嫁いだと知れば家も出るよね。しかし結婚式の時の権頭(主人公の鼠)は嬉しそうで可愛い。姫に鼠だとばれるシーンとか、多分現代漫画だったら見開きページ。落ちで猫の坊と出会って猫型瓦のある神社に祈ってるところもまたおかしい。そして権頭の後頭部が点々で描かれ、剃髪したんですよーってのを見せてるところも、下手なりに細かくてとてもいい。御伽草紙はほんとに愛らしくて可愛いです。大好き。


後半の展示が28日から始まりますが、それ以外にも細かく展示替え(というか巻き直し)があるので、こちらの展示替えスケジュール(pdf)を見て、自分の見たい場面を見逃さないようにしてくださいね。さて、後半はいつ行こうかな〜。

*1:探幽にとってのスケッチ入りメモブックのようなもの。膨大な量があり、資料としての価値も高い。