ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

Bill VIOLA展

今月8日まで開催しているビル・ヴィオラ展@森美術館に行ってきました。毎回ぎりぎりになって行く癖は直したい2007年。

Bill VIOLA (1951-)
ナムジュン・パイク(白南準 ペク・ナムジュン)の元でアシスタント経験を積み、現在おそらく最も知名度のあるヴィデオアーティスト。
69年シラキュース大学美術学部に入学しビデオ制作を開始。71年シナプス・ビデオ・グループの創設メンバーとなり、学内にケーブル・テレビ放送スタジオを設置・運用し、72年、最初のビデオ作品Wild Horsesを制作。73年の大学卒業後、現代音楽の夏期ワークショップをはじめとして多くのコミュニティに参加。78年、オーストラリア旅行中に、協力者であり妻となるラ・トローブ大学の文化活動ディレクター、キラ・ペロフと出会う。
76年の初来日より4年後の80年に再来日し、日本の伝統文化と先進ビデオ・テクノロジーを研究。81年にはソニー厚木研究所に滞在。日本の地方文化体験に基づく作品《初夢Hatsu-Yume》を制作。83年カリフォルニア・インスティテュート・フォー・ジ・アーツ講師となる。
92年からは静と動、生と死をよりフューチャーした作品制作を進める。更に最初の35mmハイスピード・フィルム作品The Arc of Ascentを制作。93年第1回ドイツ・メディア・アート賞、スコウヘガン賞(ニューヨーク)受賞。
95年第46回ヴェネツィアビエンナーレのアメリカ代表としてBuried Secretsを制作。96年英国国教会からの委嘱でインスタレーションThe Messengerを制作。98年のホイットニー美術館にて大きな個展が開かれる。2003年からは個展「受難 "The Passion"」が、ゲッティ美術館から始まる世界巡回。2005年にはパリの新オペラ座で「トリスタンとイゾルデ」のための作品を発表*1、オペラとのコラボレーションを実現する。今回の展覧会は、90年以降の作品を紹介する、アジア初の大掛かりなヴィオラの個展となった。


      
会場に入るとまず目に飛び込む作品は96年のThe Crossing, 1996。炎に包まれる男と水に包まれる男が表裏一体で展開する大きなサイズの作品*2。かなり強烈なインパクト。それからStopping Mind, 1991、Heaven and Earth, 1992といった90年代初期の作品が来て、The Greeting, 1995 以降一気に宗教性を帯びてくる。この作品はオールドマスターの絵画作品*3に影響を受けたものであり、以降Anima, 2000、Dolorosa, 2000、The Quintet of the Astonished, 2000、Silent Mountain, 2001といった作品たちでその探求を更に続ける事になる*4。殆ど動いていないかと思うほどのコマ送りの画像、作品によっては静止画なのか動画なのか分からないほどのそんな映像。ダイナミックな動きののはずのものがそのダイナミスムを失い、その余韻だけを見せる。損なわれた「動」の部分は儚いものであり、後に残る「静」の部分は永続する強さを持つ、それをヴィオラは表現したいのだろうか?最後の展示作品だったFive Angels for the Millennium, 2001 は、その巨大な画面と相反するような静寂に呑み込まれるようにして見て来た。
ところで、ヴィオラの作品を全部見たわけでは無いけれど、この人水を使うの好きなのかな?と思うくらい水に関する映像が多い気がする。特に水中から見ている画面が多いのは何故だろう?まるで深海から明るく光さす水面を見上げているような気分になる。手が届かない明るい世界を見ている気分になる。それはとても切ない気分なのだ。

1981年の、日本をテーマにした作品Hatsu-Yume (First Dream)は、キュレーターズトーク「ヴィオラ・チューズデイ」でのみ上演だったらしく、見られなかった。展覧会タイトルになっているのに見られないとは残念。あと、下のモニタで赤ん坊、上のモニタで老婆を映していた作品のタイトルが分からなかったのですが、studio_unicornさんに《天と地》だとご教授頂きました。ありがとうございます!!(04-01-2007)


オフィシャルWeb→BILL VIOLA.com

*1:知らなかった…見逃しました。

*2:ヴィオラは大画面の作品を作ることによって、鑑賞者が意識的にだけでなく身体的にも作品の中に入ることを意図している。

*3:テーマはマリアのエリザベス訪問

*4:この辺の作品は、Bettina RHEIMS ベッティナ・ランスや Brigitte NIEDERMAIR ブリジットニーデルメール(という発音でよいのか?)の写真を思い出させる。