若冲と江戸絵画展その2
昨日に引き続き東京国立博物館での「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」展の話。展示作品109点*1中17点を占める若冲作品についてです。各種作品の画像については公式ブログのカテゴリ「出展作品情報」をご覧ください。
カラー作品の凄さで有名な若冲だけど、墨絵の凄さもやはり見逃せない。まだ景和の落款の頃の作品《葡萄図》の、葡萄の粒の艶、対照的な葉の枯れ具合、撓る瑞々しい蔓、縦横無尽のようでいて細長い画面にぴったりはまる構図…素晴らしい。若冲は鹿苑寺にも葡萄を描いていますが、それよりも好きかも。朝鮮画の影響を受けての作だそうなので、千利休以後の侘び寂び茶道に通じているところが好きな理由なのかも。
《花鳥人物図屏風》は特に左隻の右から4扇目、瓢箪を背負ったお爺さんが可愛い〜vもう、この丸いのは体なのか瓢箪なのか。そしてそれよりもっと簡略化され抽象一歩手前のような《鶴図屏風》。一気に引いたと思われる鶴の体の輪郭線は絶妙なカーブを形作っている。この、一息ですぅっと描であろう線の妙技は若冲の特徴とも言えるものであり、それは例えば《鶏図》の鞭のような尾羽や《松に鷹図》の松葉にも発揮されている。描きこみの入念さと、気を抜いたラフな描き方、この極端な差が若冲の魅力のひとつである事は間違いないはず。
若冲の計算高く偏執狂的な作風も大好きだけど、このあっさりと世俗を飛び越えてしまったような飄軽っぷりはどこから来るのだろう?とぼけた味わいもあり(因みにとぼけた水墨では仙崖義梵が一番好き)、かつ力量を見せる場を逃さない。世俗の苦労とはかけ離れた*2生い立ちゆえの軽さなのだろうか。生まれながらのエレガンス!