ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ワンダフルライフ

ワンダフルライフ [DVD]
ワンダフルライフ》 英題 after life
監督:是枝裕和
日本、1998年、108分 ☆☆☆

死んだ人に、一つだけ、生きていた間に最も楽しかったことを選んでもらって、それをフィルムに撮影し、その思い出だけを胸に天国へ行ってもらう…そんな地上と天国の境目にある施設の物語。ファンタジックな設定なのに、あえて逆に非常にリアルに撮っている、でもその温度差を殆ど感じさせないまま始まり終わります(思い出撮影シーンは、映画作りの一端を垣間見られる、非常に面白いシーンでした)。

ぽんと手を叩けば何でも思い通りになるような夢の場所ではなく、寧ろ地上にとても近い場所では、使者たちの成仏のお手伝いをする人たちが働いていて、その彼らこそが成仏できなかった人たち。成仏できないと言うことはつまり、自分の人生を肯定できてないこと。“誰かを幸せにすることに深く関わる”ことが出来なかったと思っていた望月を中心に、物語は展開します。

“あえて選ばないことで自分の一生に対して責任を持ちたい”“繕うことこそがみっともない”と喝破する伊勢谷は、非常に現代的な若者像ですね。まだ自分の力を信じている。だから(死んだのに)夢を語る。その姿は清々しくある反面,いつまでも子供であることと同列です。でも、そもそも大人にならなくてはいけないのか?わたしの答えはyesです。大人になるとは、自分を繕うこともあるかもしれないけれども、それ以上に、自己に責任を持つと言うことだから。責任感のある人間は、周りを幸せにします。望月に思いを寄せるしおり役がとてもいい。この作品で、18歳の彼女は大人になる。まだ成仏はしないけど、でも彼女が成仏できる日は近いかもしれない。鼓笛隊のシーンは《ブリキの太鼓》を彷彿とさせます。大人になれない子供。(25-11-2004)