ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

海を飛ぶ夢

海を飛ぶ夢 [DVD]
Mar adentro 邦題《海を飛ぶ夢
監督:アレハンドロ・アメナーバル Alejandro Amenabar
スペイン、2003年、125分 ☆☆☆

若い頃の海での事故により頭以外を動かせなくなってしまったラモンの、尊厳死を巡る争いと愛情の話。空想力だけが楽しみのラモンを手伝う全ての人々が優しい。実在の人物であるラモン・サンペドロの手記 Letters from hell を元に、監督がフィクションとノンフィクションを織り交ぜて作り上げた物語。真摯かつ率直に生と死への疑問を捉える。悲しみだけじゃないのは、会話の端々にユーモアを混ぜてあるから。

尊厳死を認めないとする側の主張も分かるし、望む側の主張も分かる。わたしは尊厳死賛成派寄りの立場なので、結末には満足している。約束を交わした弁護士フリアからの手紙にはなんて書いてあったのかだけが気懸かり。何故彼女が約束を守れなかったのかの理由は何となく分かるが、では手紙は一体誰が書いたのだろう?それともどこか見落とした部分があるのだろうか?あとロサとの関係がちょっと甘いかなーという印象。

わたしは、鳥の視点である空中を飛ぶカメラワークが大好きなのだが、この作品にもそれがある。空想力で海まで飛ぶシーンだ。ロングで撮られたこの場面は、見る人に飛ぶ事への憧れと、しかし飛べない(どころか歩けない)現実を突きつけ、それ故に主人公ラモンへの共感を呼ぶ装置となりうるだろう。派手なアクションなど全く無いのに、とにかく鑑賞者をじっくりと引き込む、落ち着いた作品。アメナーバル作品は回を追うごとに成長しているなと思わせる。(17-02-2005)