ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

マザー・サン

Mat'i Syn 邦題《マザー・サン》
監督:アレクサンドル・ソクーロフ Alexandre Sokurov
ロシア・ドイツ、1997年、73分 ☆☆☆☆

《マリア》《日陽はしづかに発酵し・・・》《静かなる一頁》《精神(こころ)の声》などなど、ソクーロフ映画はどれも好きです。いずれ。
死に行く母をゆったりと、しかししっかりと抱きしめた息子、という映像が1ショットでじーっと長回しされるオープニング。草花の、風になびく音。最小限の台詞。全てが気高く美しく感じられます。死は生のサイクルの一環であり、決して特別なものではないけれど、哀しいもの。母の死を静かに受け入れる青年の、心の動きのようなゆったりとしたカメラワーク。ドイツロマン派の画家カスパー・ダヴィッド・フリードリッヒの絵画を基盤にして作り上げたという、まさに「絵画的」な画面と処理に、ソクーロフの熱の入れようを感じます。哀しいわけではないのに、胸がいっぱいになってしまって、つい涙が出てしまうような映画。ロマン派の絵画に用いられる言葉「崇高」を、映画に当てはめるとしたらまず浮かぶのはソクーロフだと思います。(----2000)