ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ストーカー

STALKER 邦題《ストーカー》
監督:アンドレイ・タルコフスキー Andrei Tarkovski
旧西ドイツ・ロシア、1979年、163分 ☆☆☆☆☆

旧ソ連のSF作家ストルガツキー兄弟の作品を原作とした、《惑星ソラリス》に続くタルコフスキー2本目のSF映画。でもSFっていうよりはもっと、宗教的な感じがしました。いや、SF的であるということがもうすでに宗教性を持っているのかもしれませんが。
願いが叶う場所であり、かつ誰も踏み込んではいけない場所である“ゾーン”に、幸せを求めてトロッコで乗り込む男2人と、“ゾーン”の案内人(“ストーカー”)が淡々と繰り広げる物語。幸せとは何処にあるのか?という『青い鳥』ののような物語ではありますが、より近現代的な問題も孕んだ物語です。現代社会で失われた「信仰」への希求、モダニスム批判。タルコフスキーのキーワードともなるこうした問題意識が、美しいロシアの自然を通して圧倒的に迫ってきます。
観た後に、宗教(大きな意味での)の持つ包容力、残酷性、忠誠心、絶望感・・・様々な意識が錯綜する一本。果たして人は、ある種の極限状態において宗教無しに生きられるのだろうか?とすら考えてしまうほど、広い意味で“信仰”の問題を考え直させる。(----2000)