ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

ノスタルジア

NOSTALGHIA 邦題《ノスタルジア
監督:アンドレイ・タルコフスキー Andrei Tarkovski
イタリア・フランス(ソヴィエト)、1983年、130分 ☆☆☆☆☆

タルコフスキー作品では、《ストーカー》と並んで好きな作品です。そして《ストーカー》よりも過激な作品。しかしそれでいて自然のエレメントを大切にするタルコフスキーらしく、雨や風、木、水、火がモノクロームの画面に揺らめく姿は崇高そのもの。アンドレイの「芸術を理解するためには国境をなくせばいい」という台詞に、タルコフスキー自らのメッセージが強く反映されている。画像そのものに細工を施して幻想的な雰囲気を作り上げている点もまた秀逸。何度でも見たい映画。

トスカーナ地方を舞台に、旅するロシア詩人アンドレイとドメニコの物語。狂人ドメニコが、ロウソクを持って湯治場広場を何度も何度も行ったり来たりするシーン、衝撃的な(ゆえに有名な)ラストシーン…。あらゆるシーンが心に残り、痛々しさを残す映画だ。「この火が消えなければ世界は救われる」というドメニコ。それは所詮無理なことで、しかしドメニコはそれを信じて湯治場を往復する。その行為は愚かであるかもしれないが、また純粋でもある。狂人というよりは、白痴という言葉のほうが適切な気がする。(----2000)