ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

小人の饗宴

Auch Zwerge haben Klein angefangen 邦題《小人の饗宴》
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
ドイツ、1969 / 1972年、96分 ☆☆☆☆☆

西ドイツ時代の制作。小人を隔離しておく施設で13人の小人が反乱を起こす物語。奇怪に笑う歪んだ顔と笑い声、そしてぐるぐる回るバスの動きが悪夢のように記憶に焼きついてはなれない逸品。悪夢のような、だからこそ忘れられないほど重くのしかかる。
権力や体制といった傍若無人なものに、弱者であるはずの小人が立ち向かう様は、まさに世界の縮図。テルール(terreur)、所謂テロとは弱者が強者に与える最大かつ唯一の有効な手段であるということを改めて感じる。現在「テロに対する戦い」とかそういうことが叫ばれている中、そもそもテロとは“予期し得なかった恐怖”でありそれに備えることなど不可能なのだということを知らなければならない。そして、テロを生み出す母体は強すぎる支配権力なのだということを。
テロに備え迎え撃つのではなく、テロを生み出さないために何をすべきか考えることこそが大事なのだ。半世紀近く昔の作品なのに、今なお圧倒的な説得力をもって迫る作品。(04-02-2004)