ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

グッバイ・レーニン!

GOOD BYE LENIN ! 邦題《グッバイ・レーニン!》
監督:ヴォルフガング・ベッカー
ドイツ、2002年、118分、☆☆☆☆

東西ドイツの壁崩壊をテーマに、社会主義者だった母(の心臓病)を巡る息子の奮闘と、(月並みな表現だけど)家族愛。主人公の少年は物凄く頑張っていて、ママの世話も彼女とのことも、全てにおいて一生懸命。それがまた鑑賞後の晴れやかさを産むのだと思った。

国家の流れに翻弄される一市民の生活を描いているが、センチメンタリズムに陥らずに全体としてコメディとして仕上げているのが大正解。しばしば悪として描かれることの多い社会主義体制だが(その原因はやはり社会主義共産主義という建前の元の独裁国家であることだろう)、それを悪として描かず、ただ幼少期の思い出として何となく物資に乏しく薄暗い印象であったというだけに留めているのもまた良かった。社会主義国家だったからこそ実現できた出来事、ここではシャトル打ち上げの国家プロジェクトを、幼少期の憧れに載せて物語全体を繋げる鍵にしているところなどは、かなりロジカルに脚本を組み立てている。

母にあらゆる変化を緩やかに受け止めさせていかなくてはいけない主人公は、様々な策を弄するのだけど、テレビのニュースまで作ってしまうところにはビックリした!友達もまたいい人ばっかりなんだ、これが。随所に腹を抱えて笑っちゃうような場面を入れつつも、実はとてもナイーヴな問題を扱っていて、でもそのナイーヴさも笑い飛ばしちゃおうよ、という意図すら感じられる好作品。(07-12-2003)