ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

川内倫子展2005

Cui CuiExposition Rinko Kawauchi 「AILA The eyes, the ears, Cui Cui
@Fondation Cartier 18/03/2005-05/06/2005

全部で3セクションに分かれた川内倫子の写真展。ヨーロッパにおける彼女の知名度は、是枝監督作《誰も知らない》のスティルで上がった気がしますが、それでもなおまだ極東の女性写真家という触れ込みがないと難しい模様。でも雰囲気の良いカルティエ財団での個展というのは、今後の彼女のキャリアにとってかなり良い作用をもたらすのではないでしょうか。

写真のマチエール(焼き付け方だとか印画紙の種類だとか)については全くの無知なので印象でしかないのだが、会場に入ってすぐに、彼女の写真そのものの美しさにはっと目が見開かされる思いがした。それだけで非常に丁寧な感じがする。さらに、色彩がヴィヴィッドであるわけではないのに(寧ろ逆に淡い色調のほうが多い)、クローサップされた対象と地とが、輪郭線でも引いたかのようにくっきり明分されているので、その分対象が目立つのだろう。
色の美しさとしてのブルーを再確認させられる作品が多い。撮られる対象は決して珍しいものではなく日常的でありすぎるがゆえにあえて目を向けないものや、あるいはちょっとした旅先のスナップ的でさえあっても彼女の視点のユニークさが感じられる。
第2セクションのThe eyes, the ears,は第一室の中心に小さな小部屋として設置されており、表参道の本屋Nadiffの展示を髣髴とさせる。花火の写真をあんなに鮮やかに撮るのは、いったいどうやるんだろう?音まで聞こえてきそうないい写真だった。
続く第3セクションCui Cuiでは、写真展示ではなくスライド展示だった。彼女の祖父(だと思う)の死と親戚の出産とを同時並行の出来事として見せることは、輪廻転生という仏教的な思想を感じずにはいられない。そこに写されるものは、死の暗さではなく生の連関作用であり、家族の死と生をクールに見つめる川内の視点がある。寂しさはなく、ただ胸が詰まるような懐かしさがあるのみだ。Pierre Takahashiによる音楽もぴったりとはまっていて良かった。

作品は全体的に「生」の印象を与えるもので溢れていた気がする。噎せ返るような生のパレードだ。「死」を撮ったものももちろんあるのだが、しかしそれはやがて「生」へと繋がっていくことを予測させるものであったように思う。穏やかで静かで、そしてしなやかに強い。そんな写真だったと思う。彼女もそういう人なんだろうか。だとしたらとても素敵だ。(12-05-2005)

展覧会プラン
AILA(2000-2004)←トルコ語で“家族”という意味だそうです。
The eyes, the ears,(1999-2004)
Cui Cui(1992-2005)

カルティエ財団オフィシャルサイト