ふらんす*にちようざっかblog

美術とフランスにまつわる雑話。でも最近は子育てネタばかり。

死の王

Der Todes King 邦題《死の王》
監督:ユルグ・ブットゲライト
ドイツ、1989年、 80分

この作品は、1週間に1日ずつおきる7つの自殺を描いたものです。かといって別に自殺を奨励するような作品ではないし、逆に自殺を思い止まらせるようなものでもありません。
分娩中の女性の声とそこから生まれた赤ん坊の泣き声に始まり、次第に腐り、蛆がわいて行く死体の映像で終わるこの作品のテーマは「人の一生」。生まれてから死ぬまでを、ただ見つめているだけの映画。自殺する7人は、ある日突然謎のチェーン・レターを受け取り、そして自殺します。何故自殺しなくてはいけないのか、さっぱり分かりませんが、それでも彼らは死ぬのです。
チェーンレターには次のように書いてあります。

    われわれは人生の喜びを失いつつある。これが長い苦しみの結果、出した答えである。 君がこの手紙を受け取る頃、我々はもはや生きてはいないだろう。 そして、君にも自殺することを薦める。 何故なら、人生においてただひとつ確かなことは死なのだから。 神は6日で天と地を創造し、7日目に命を立たれた。 我々に死を与えてくれ。7日目の兄弟より幸福のメッセージを送る。
この、重くのしかかる死に耐えられるでしょうか。視点が冷静なだけに、かえって恐ろしく、魅力的。(----2000)